溶接とは!?溶接の接合方法の種類と溶接のメリット・デメリット

溶接は金属を接合させる加工方法として、自動車や船舶、建築資材や電子機器などさまざまな製品を製造するために利用されています。
溶接の加工方法は多岐にわたり、それぞれに特徴があります。

この記事では溶接とは何か、代表的な溶接方法などについて解説します。

溶接とは

溶接とは簡単に言えば「2つ以上の金属を溶かして接合すること」です。

JIS(日本産業規格)によれば
「2個以上の母材を接合される母材間に連続性があるように、熱、圧力又はその両方によって一体にする操作」
と定義しています。

溶接は一定の温度に達すると溶け始めるという物質の性質を利用しています。
加熱または加圧によって2つ以上の金属の接合部分を溶かした後に冷却し接合する、というのが溶接の仕組みです。

溶接の歴史

溶接の歴史は古く、紀元前3000年頃には既に鍛接、リベット接合、ろう付けによって金属の接合が行われていたことが分かっています。

メソポタミア地方では雄鹿の頭部をあしらった銅製のレリーフの接合にはろう付けが用いられており、紀元前1400年ごろに造られた古代エジプト王ツタンカーメンの黄金の棺の中からは鍛接したとみられる鉄製の装飾品が発見されています。

このように、古くからある溶接ですが、本格的に金属を融接する技術は19世紀の産業革命に入ってから発明されています。
1800年にアークが発見され、1880年頃にアーク溶接法が開発されました、

さらに、19世紀から20世紀初めには現在広く使われている溶接法が次々と開発され、第二次世界大戦に掛けてサブマージ溶接、ティグ溶接、ミグ溶接などの溶接法が開発され、生産技術が大きく発展しました。

最近では1948年に電子ビーム溶接、1960年頃にレーザー溶接法が開発され、材料や製品に応じて適切な溶接法が選択できるようになっています。

溶接の接合方法の種類

溶接には加工の方法によって大きく「融接」「圧接」「ろう接」の3種類に分けられます。

融接

融接は溶接の中でも最も一般的な加工法です。

2つの金属の接合部分を溶かすか、外部から溶けた金属(溶加材)を加えた後に、溶けた金属部分が冷却して凝固することによって接合する加工法です。

融接の代表的な溶接方法が「アーク溶接」「ガス溶接」「レーザー溶接」です。

圧接

圧接は接合部に機械的圧力加えて溶接する溶接法の総称で、金属の接合部を摩擦や爆発によって加熱し、圧力を加えて接合する方法です。

圧接は機械的圧力を使用するため数値制御が可能な点がメリットです。

圧接の代表的な加工方法はガス圧接、摩擦圧接、抵抗溶接、拡散接合、超音波圧接、爆発圧接などがあります。

ろう接

ろう接は母材よりも低い温度で融解する溶加材で接合する方法です。
融接や圧接とは異なる点は、母材そのものを溶かさずに接合する点です。
母材同士は接合していない為、強度面では他の溶接方法に劣る点で注意が必要です。

ろう接の代表的な加工法としてはろう付けとはんだ付けがあります。

溶接のメリットとデメリット

では溶接にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

メリット

・気密性に優れる
・材料と工数の削減ができ、コストダウンを実現できる
・短時間で簡単に接合ができる
・作業時の騒音が少ない

デメリット

・母材の変形収縮により寸法精度の維持が難しい
・材料によっては接合箇所がもろくなる場合がある
・自動化されていない場合、作業者の技術レベルによって強度に差が出やすくなる

溶接の温度

溶接の中でもアーク溶接は高温で強い光を発生します。
出力電流は5~1,000A、出力電圧は8~40V、アーク温度は5,000~20,000℃にものぼります。

鉄の溶融温度が1,500~2,800℃のため、鉄と鉄を接合するには十分な温度です。

アーク溶接の種類

溶接の中でも特に広く使われているアーク溶接にはさまざまな種類があります。

電極が溶融するか否かにより大きく2種類に分かれ、電極が溶融して消耗する「消耗電極式溶接(溶極式)」と電極は溶融せず溶加材を母材へ溶かし込む「非消耗電極式溶接(非溶極式)があります。

消耗電極式溶接

・被覆アーク溶接
・炭酸ガスアーク溶接
・MAG溶接(マグ溶接)
・MIG溶接(ミグ溶接)
・サブマージアーク溶接
・セルフシールドアーク溶接
・スタッド溶接

非消耗電極式溶接

・TIG溶接(ティグ溶接)
・プラズマアーク溶接

それぞれの溶接方法についてさらに詳しく見ていきましょう。

被覆アーク溶接

被覆材(フラックス)を塗布した溶接棒を電極にし、母材との間に発生したアークの熱を利用して溶接する方法です。
溶接棒を使い分けることでさまざまな母材に対応することが可能で、これまでの主流の溶接法として用いられてきました。

炭酸ガスアーク溶接

シールドガスに炭酸ガス、または炭酸ガスを中心とした混合ガスを用いる溶接法で、大抵は半自動溶接で使われます。
炭酸ガスが安価であるため経済的ですが、厚板溶接には向いていません。

MAG溶接(マグ溶接)

シールドガスに不活性ガスと炭酸ガスの混合ガスを用いる溶接法です。
不活性ガスのみを用いると溶接面の仕上がりが美しい反面、アークが広がりやすく溶け込みが浅くなるデメリットがあります。
そこで、アークを細く集中させることができる炭酸ガスを混合して溶け込みを深くさせます。
マグ溶接も一般的には半自動溶接で使われます。

MIG溶接(ミグ溶接)

シールドガスにアルゴンやヘリウムなどの不活性ガスのみを用いる溶接法です。
MIG溶接は炭酸ガスアーク溶接に比べて仕上がりが美しくなりますが、アルゴンガスやヘリウムガスが高価なため、高い品質を求められる製品に用います。

サブマージアーク溶接

事前に粉末状のフラックスを溶接線上に散布しておき、その中に溶接ワイヤを自動送給し、溶接ワイヤと母材の間にアークを発生させて溶接する方法です。

セルフシールドアーク溶接

ガスを使用しない溶接法です。
外部からガスやフラックスを供給せずに溶接し、アーク発生と共にアーク柱と溶融池を外気の酸素や窒素から保護して溶接します。

スタッド溶接

溶接棒や溶接ワイヤーを使わず、スタッドと呼ばれるピンを専用のガンに取り付けて母材に押し当てた状態で電流を流して引き上げ、アークを発生させて溶接します。

溶接にはさまざまな種類がある

溶接の歴史は古く、さまざまな加工法が開発されて今日に至っています。

溶接の種類が豊富にあることで、多くの加工法によりあらゆる製品を製造することを可能にしています。

溶接は優良業者に依頼することで制作した形状や材質、溶接方法に合った技術と経験により高い精度の製品を製造することが可能です。