溶接で発生する強い光から目を守るため、溶接面の使用は欠かせません。
溶接面にはさまざまなタイプがあります。近年では液晶面が自動的に明るさを調節する自動遮光溶接面が、その使いやすさと機能性から広く使用されています。
今回は、自動遮光溶接面の仕組みや選び方、普通の溶接面との違いについて解説します。
自動遮光溶接面とは
自動遮光溶接面は、ガラス面が液晶タイプの溶接面で、フルフェイスのヘルメットのような外観が特徴です。
センサーと液晶フィルターを搭載しており、自動的に視界を変化させる機能を持っています。
液晶フィルターはアーク光が点灯しているときには暗く、消灯しているときには明るくなるように視界を自動的に変化させます。
そのため、アークの点滅に関わらず常に着用していることが可能です。
液晶フィルターが自動で変化して常に着用できるため、作業者は両手が自由になり、アークが点灯する際に溶接面の装着が遅れて有害因子に暴露されることもありません。
自動遮光溶接面にはソーラーパネル式と電池式があります。
普通の溶接面との違い
普通の溶接面の遮光ガラスは自動で変化しません。
アーク光が点灯するときに溶接面を被り、顔と目を保護するものです。
普通の溶接面は、通常は外側から素ガラス、遮光ガラス、素ガラスという風に3枚を重ねて使用します。
片手で持って使用する手持ち型と頭に装着して使う被り型があり、どちらも自動溶接面に比べると安く、初期コストを抑えることができます。
自動遮光溶接面の仕組み
自動遮光溶接面の液晶面には、明るさ(透過率)が変化する液晶フィルタープレートと、アークの点滅を検出する光センサーを持っています。
液晶とは、個体(結晶)と液体の間に存在する中間的な状態のことです。
自然状態では棒状や円盤状の分子が緩やかな規則性を持って並んでおり、液体の流動性と結晶の規則性の双方を兼ね備えています。
液晶は外部電圧等によりその分子の並び方が変わる性質があり、並び方が変わることにより光学的な見え方や物理特性が異なります。
一般的に液晶ディスプレイは、電圧がかかっていないときは液晶分子はガラス面と並行です。電圧をかけるとガラス面と垂直な方向へ液晶分子の向きが変わります。
液晶分子はその向きによって光学的な性質が異なり、液晶分子の動きと液晶を挟む偏光板の偏光方向を組み合わせることによって光の透過量をコントロールできます。
この仕組みを使って活用されているのが、パソコンやスマートフォンの液晶ディスプレイなどです。
アーク溶接作業では自動遮光溶接面の液晶フィルタープレートが、アークが点灯しているときには暗く、消灯している場合には明るく変化します。
自動遮光溶接面の液晶は製品により遮光までの反応速度に幅があり、反応速度が速いほど目に与えるダメージを少なくできます。
ストレスがなく安全に使用できる遮光速度は1/15000~1/25000秒ですが、最近発売されている製品はどれも違和感なく明るさが変化するため、極端に遅いものでなければどれを選んでも問題ありません。
自動遮光溶接面の選び方
最近では自動遮光溶接面にもさまざまなタイプが登場しており、DIYで使う方にも選択肢が広がっています。
自動遮光溶接面も普通の溶接面も基本的な選び方は共通しています。
溶接面を購入する際は以下を参考にしてみてください。
遮光度
光の見え方を左右する遮光度を選びます。
暗すぎる液晶では見えにくく、明るすぎる液晶ではまぶしくて作業ができません。最適な明るさを選ぶことが大切です。
溶接面はJISで定められた遮光度番号から選びます。
遮光度番号は高いほど強い光に適しています。
JISが定める「遮光保護具使用標準」は次の表のとおりです。
遮光度番号 | 被覆アーク溶接 | ガスシールドアーク溶接 |
5 | 30A以下 | – |
6 | ||
7 | 30~75A | |
8 | ||
9 | 75~200A | 100A以下 |
10 | ||
11 | 100~300A | |
12 | 200~400A | |
13 | 300~500A | |
14 | 400A以上 | |
15 | – | 500A以上 |
16 |
自動溶接面の多くのタイプが遮光度#9~13または#6~13です。
もちろん、それ以外の電流に対応しているものもありますので、作業内容に合った遮光度のものを選びましょう。
遮光の速さ
自動遮光面の液晶は製品によって遮光までの反応速度が異なります。
上でもご紹介したとおり、1/15000~1/25000秒くらいの遮光速度であれば問題ありません。
最近はどの製品も反応速度が速いため、極端に安価なものや、製造年の古い製品でなければ特にストレスなく使用できます。
感度調節機能が付いているか
最近の自動遮光溶接面は、光の感度調節機能が付いているタイプがあります。
通常の感度だと太陽光や照明などにも反応して光の調節をしてしまうため、作業効率が悪くなってしまいます。
感度調節機能付きの溶接面は比較的価格が高いものが多いです。しかし作業効率がアップし、作業中のストレスも軽減できます。
電源のタイプ
自動遮光溶接面にはソーラーパネル式と液晶の電源タイプがあります。
外で溶接する機会が多い場合はソーラーパネル式がおすすめです。
一方、室内や暗い場所での作業が多い場合は電池式をおすすめします。
重量
溶接面の重さは作業を長時間する場合には特に重要です。
重いと首や肩に負担がかかり、疲労の原因となります。できるだけ軽いものを選びましょう。
自動遮光溶接面はフルフェイスタイプのため、基本的には被ったままの作業になります。重量にも注目して選ぶことが大切です。
溶接面の着用は法律で義務付けられている
溶接面の着用は、労働安全衛生規則により規定されています。
アーク溶接のアーク光や、そのほかの強烈な光線を発散するような場所では、作業場所を区画する、適当な保護具を備えることが義務付けられています。
また、有害な光線にさらされる業務では、作業にあたる労働者に保護衣、保護眼鏡などの適切な保護具を備えることが必要です。
自分に合った溶接面を選ぶ
自動遮光溶接面について解説しました。
自動遮光溶接面は、液晶フィルターが明るさに応じて自動的に変化しますので、被ったまま溶接の作業が可能です。
そのため両手が使え、さらには有害な光から目をしっかりと保護してくれます。
溶接面を選ぶときは、作業の内容や作業場所、装着性など、自分に合ったものを選ぶことが大切です。