溶接ビードとは?ビード除去の方法と仕上げ・検査の方法

アーク溶接では溶接ビードと呼ばれる金属の盛り上がりが発生します。
製品によってはビードを除去しなければならないものもあり、その際にはビードの除去を行います。

ここでは、溶接ビードとは何か、ビードの除去方法などについて解説します。

溶接ビードとは

溶接ビードはアーク溶接の際に発生する溶接痕の盛り上がりのことを指します。

金属がみみず腫れのように盛り上がった形状になりますが、これはアーク溶接をする際に使用する溶接棒が原因です。
アーク溶接では溶接棒を溶かすことで溶接をしているため、溶接部に溶けたワイヤー分の質量も加わります。
この部分が一般的に溶接ビードと呼ばれています。

溶接痕をそのままにしておくと、例えばパイプの場合はパイプ内部に盛り上がった部分ができることになりますが、パイプの利用用途によってはパイプの内面も綺麗にしておかなければならない場合もあります。
このような場合には溶接ビートを除去する「ビードカット」をしなければなりません。

ビード除去の必要性

溶接ビードの除去はなぜ必要なのでしょうか。
理由は大きく分けて美観を高めるため、衛生面のための2つです。

美観を高めるため

溶接ビードの盛り上がった部分をそのままにしておくと美観上良くないと考える場合には
ビードカットで盛り上がりを除去し、表面を滑らかに仕上げます。

衛生面のため

溶接ビードが残っていると表面に凹凸ができます。
パイプの中に凹凸があると微細な粉や液体などが滞留してしまいます。
すると、滞留した粉や液体が腐敗してしまい、雑菌等が繁殖してしまうこともあるため衛生上良くありません。

食品の製造工程や製薬の工程では衛生面の確保は重要となりますので
ビードをしっかりと取り除いて滑らかにする必要があります。

溶接ビードの除去方法

溶接ビードの除去方法は主に3つの方法があります。
1つ目は切削機を使ってビード部を削り取り除去する方法
2つ目はビードを潰す方法、3つ目はビード部を圧延する方法です。

それぞれのメリットとデメリットは以下のようになります。

加工方法:切削
メリット:仕上がりが綺麗、コストが安い
デメリット:削りカスが出る

加工方法:転造
メリット:加工が簡単でスピードが速い
デメリット:仕上がり面が粗い、質量増加

加工方法:圧延
メリット:外見の仕上がりが良い
デメリット:導入コストが高い、質量増加

このように ビードの除去方法はいくつかありますが、多くの場合は切削によりビード除去を行います。
切削は削りカスが出ますが、コスト、作業性、生産性に優れているほか
溶接ビードで増加した質量の補正をできるというメリットがあります。

とはいえ、製品に求められる優先順位を考えてビード除去の方法を選択する必要があります。

溶接の仕上げ方法

チッピング

チッピングは溶接後、フラックスの皮や浮いた溶けクズなどをチッピングハンマーで叩いてはがし
ワイヤーブラシで仕上げる方法です。

研削

研削とはグラインダー仕上げのことで、粗くチッピングした後に
ディスクグラインダで溶接の波形状を取り除き、ならして滑らかに整えます。
研削用の砥石を高速で回転させるグラインダーを利用して素材の表面を研削、研磨します。

切削

切削は機械仕上げのことで、チッピングのあとに工作機械に取り付けて
面取り用のエンドミル(フライス加工)や旋盤加工を施します。美しい加工に仕上がります。

バフ研磨

布などで出来たバフを使ってステンレス表面の研磨を行うことです。
ステンレス表面の傷や凹凸を滑らかにする表面仕上げの方法ですが、ビートカットの最終仕上げとしても使われます。
バフ研磨を行うことにより輝きのある製品に仕上がります。

溶接検査の方法

溶接検査にはさまざまな方法があり、目視で検査するものから
超音波や放射線技術を用いて内部状況を確認するものもあります。
近年では自動外観検査システムが進化しており、正確な検査が進んでいます。

溶接検査の手法には外観検査と内部検査に分かれ、それぞれいくつかの手法が存在します。

目視検査による外観検査

目視検査は溶接検査の中でも最も普及している方法です。
検査員が製品1つ1つを目で見て検査していきます。

必要に応じて検査治具を用いて規定通りの溶接長で溶接されているか、などを確認します。

3Dカメラによる外観検査

3Dカメラを用いて溶接箇所を撮影し、それを3次元データ化して判定する自動検査システムです。
特にビードの立ち上がり部分やビードの高さなどを明確に探知することが可能です。
高速・高精度で自動検査ができるため、高いニーズを誇っています。

磁紛探傷方式による外観検査

強い磁性を持った材料の表面や表面近くに付いた傷を目視で検出しやすくする検査方式です。
傷に漏洩磁束が発生し、この状態で磁粉を振りかけると磁束に磁粉が付着します。
これを目視確認することで傷を発見する手法です。

浸透探傷方式による外観検査

検査員の目に見えやすい色や蛍光色の浸透液を検査部分に塗布し、傷に浸み込ませます。
余分な塗料を拭き取った後、現像液を塗布し、染み込んだ浸透液を吸い出して表面に浸透液を広げ、傷を目視で確認します。

放射線透過試験による内部検査

検査対象を放射線源とフィルムで挟んで設置し撮影する方法です。
内部欠陥の位置や大きさを調べることが可能です。

放射線を取り扱うため安全管理が必要な手法です。

超音波探傷試験による内部検査

エコーを使って内部の割れや溶け込み不足を検査します。
検査対象にエコーを当てると内部に空洞がある場合早く戻ってきます。
これを画像化し、欠陥の有無と位置を特定します。

溶接ビードは溶接業界の課題の1つ

溶接の際に発生する溶接ビードは業界の課題の1つです。

ビードを発生させない溶接手法も存在し研究が進んでいますが
まだ効率上実用化できていないのが現状です。

そのため、ビードを綺麗に除去するのが現在の主流となっています。
ビードカットでは切削に出てくるビード屑がその後の工程に問題となる場合がありますが
ビード屑の処理方法などのも効率化が進んでいます。

また、検査方法も自動化が進んでおり、自動検査を導入することで全数検査を行い
再検査品のみを検査員がチェックすることで検査員の負担を減らしながら全数検査を可能にしています。