溶接割れはなぜ起こる!?溶接欠陥の種類と原因・対策とは

溶接工程は適切な溶接設定に基づき、図面通りに接合することが原則ですが
溶接部の外観や強度のような「溶接品質」を担保することも必須です。

そこで溶接品質を損なう溶接割れを始めとした代表的な表面欠陥の種類、原因、対策をご紹介します。

 

溶接金属割れ

高温割れ

高温割れは凝固中に発生する溶接金属割れです。

ビードに平行に走る「縦割れ」、ビードに直角に出る「横割れ」
終端に発生するクレーター割れというように割れの角度で名称が異なります。

高温割れが起こるのは溶接金属中に含まれる硫黄やリン等の成分偏析が凝固温度幅の拡大
収縮応力の発生が原因で起こると考えられます。

対策として当節金属中の硫黄やリンの含有量を減らしたり、溶接速度を低速にします。
また、適切な板付けやタブ板の工夫で収縮応力の影響を低減することも検討します。

低温割れ

溶接部の冷却後に発生する割れです。
発生箇所により「ルート割れ」「ビード下割れ」「トウ割れ」と名称が分けられます。

溶接部の拘束応力や歪みの集中箇所に溶接中に侵入した水素が拡散し、HAZの硬化組織が水素脆化を引き起こす事で割れを発生させます。

低温割れを防ぐ対策として、溶接中の水素侵入の低減、余熱を利用して冷却速度の調節を行う、溶接金属の強度が強くなり過ぎないように調節する等を行います。

凝固割れ

凝固割れは溶接金属部でミクロ偏析が生じ、低融点の膜が形成され、その部分の凝固が終了していない状態で収縮時の応力が作用することで生じる亀裂です。

凝固割れの原因は溶接材料の選択不適正や、継手形状によって大きな応力が発生する可能性があり、その不適正によるものです。

対策としてはチタンやジルコニウム等を添加して結晶粒を微細化する、溶接材料の変更、凝固時の冷却速度を改善することで発生応力を最小化する、継手形状を変更する、等です。

SR割れ

溶接後熱処理等の際にHAZの粗粒域に発生する粒界割れです。
クロムやモリブデン、バナジウム等の合金元素を含むHAZは、450度以上に加熱されると大きく脆化し、再加熱処理を行ったときに起こる応力により粗粒域に粗粒割れが発生します。
粗粒割れの防止対策として溶接中の水素侵入の低減、余熱を活用した冷却速度の調整、溶接金属の強度が強くなり過ぎないように調節します。

形状不良

オーバーラップ

オーバーラップは溶接電流が小さく、アーク等によって掘られた溝が小さいのに対し、溶接金属が多く、ビード止端部から溢れ出た状態を言います。

オーバーラップは溶接速度や溶接トーチの角度等溶接条件の不適正や、溶接電流が低すぎる等が原因で起こります。

対策としては溶接速度を速くする等、溶接条件の改善や、電流の改善を行います。

アンダーカット

アンダーカットはオーバーラップとは正反対の状態になる溶接欠陥を言います。
溶接電流が大きい為、アーク等によって掘られた溝が大きいのに対し、溶接金属が少なくビード止端部が溝状になった状態です。

原因はオーバーラップと反対で、溶接電流が高すぎる、溶接トーチの角度等溶接条件の不適正が挙げられます。

アンダーカットを防ぐ対策は溶接速度を遅くする、溶接電流を低くする、等です。

溶け込み不良

溶け込み不良は完全に溶け込んでいない部分が存在している状態のことです。

原因は溶接速度や溶け込み量に影響を及ぼす電流値の不適正、開先面の開先角度の不適正です。
対策としては開先面の角度を大きくする、過小電流を避ける等溶接条件の改善等です。

 

残留介在物

スラグ巻き込み

溶接金属の中に溶接中に発生する非金属物質である「スラグ」が残留した状態です。

スラグ巻き込みの原因は溶接の前層や前パスのスラグ除去の処理が不完全だったり、融合不良が発生している可能性があります。
対策として入念なスラグ除去、融合不良の防止が必要です。

溶接の内部測定・検査の方法

溶接内部の品質が保たれているかを確認する為には超音波または放射線を用いて検査を行います。

超音波探傷試験(UT)

超音波を放射し、溶接内部の傷等から反射した超音波の大きさや強さを計測する試験法です。

反射された超音波は表時期に波状のグラフで映し出されます。
空洞や異物がない場合、超音波は底面で反射し探触子に戻ってきます。
途中に空洞や異物があると側面に達する前にエコーが探触子に戻ってきます。

エコーが探触器に表示される図形を観察し、欠陥の有無や位置を測定します。

放射線透過試験(RT)

放射線を放射して写真フィルムに撮像する試験法です。

放射線は物質を透過する性質があり、その性質を利用して溶接内部の検査をします。
内部欠損がある場合、健全部より放射線の透過量が多くなります。
放射線の透過量が多いほどフィルムに黒く写され、その濃淡差の写真からの内部の状態確認ができる試験法です。

放射線透過試験は人体に有害な放射線を使用するので、安全対策と管理が必要です。

溶接部の補修方法

溶接部の欠陥はどのように補修したらよいのでしょうか。
ここでは溶接欠陥ごとの補修方法をご紹介します。

余盛

過大な余盛は応力集中の原因となる為、グラインダー等を使って適切な高さと形状に成形します。

アンダーカット

アンダーカットの深さが1.0mm以内の場合、グラインダーで母材を削りすぎないように滑らかに仕上げます。
深さが1.0mmを超える場合はアンダーカットを除去して補修溶接を行います。

オーバーラップ

オーバーラップは応力集中の原因となる為、グラインダーで削除するか、オーバーラップを削除した後、補修溶接を行います。

ピット

ピットの周囲を削除した後、補修溶接を行います。

割れ

割れの位置、深さを浸透探傷試験等で特定し、割れ部を削除して補修溶接します。

融合不良・ブローホール

超音波探傷等で欠陥位置を特定し、ブローホールを除去し補修溶接します。

 

溶接欠陥の原因を把握し対応策を考えましょう

溶接にはどのような欠陥が発生するか、または発生しているかを把握し、その原因を追究し、対策を考えましょう。

溶接の器具や作業方法等を見直す必要があるものと使用する溶接金属の見直しが必要になるものがあります。

溶接欠陥は製品の見た目に関わるだけでなく、安全性にも大きく影響します。
欠陥については日々作業員へ意識の徹底が必要です。