ウェルドボルト、スタッドボルトの溶接方法とその特徴

ボルトとナットでは接合が難しい板金などの接合ではボルトの頭部を溶接して据え付けるウェルドボルト(溶接ボルト)を使用します。

この記事では、ウェルドボルトとは何か、スタッドボルトとの違い、また、これらのボルトの溶接方法や工法の特徴について解説します。

 

ウェルドボルトとは

ウェルドボルトとは別名溶接ボルトとも言い、溶接で金属板に据え付けるボルトの種類です。
ボルトの頭部に溶接用の突起が付いており、頭部を金属板の穴に通して溶接することで、強固にボルトを接合できます。

一般的に接合が難しい自動車板金や、電化製品の製造、建築工事などでよく活用されます。

ウェルドボルトは主に隅肉溶接を利用します。

 

スタッドボルト

スタッドボルトは別名植え込みボルトとも呼ばれる、両端に雄ねじ部を持つボルトです。
頭部形状がなく軸部のみの形状がスタッドボルトの特徴で、片側を機械や装置に植え込んだあとにもう片方に部品を取り付けてナットで締め付け、固定します。

精密板金部品にボルトを取り付ける場合、ウェルドボルトを板金の裏から差し込み、裏側からボルト頭を溶接する方法がありますが、裏からの溶接は溶接時間が長くなったり歪みの発生が起こったりする可能性があり、仕上げ作業が必要になる場合があります。

このときにウェルドボルトの変わりにスタッドボルトを使用することで、溶接による歪みや焼けを防止し、仕上げ工数を削減できます。

ウェルドボルトは隅肉溶接を利用しますが、スタッボルトはスタッド溶接を利用するため、溶接時間が短い点も特徴です。

スタッドボルトは溶接して固定するのはもちろんのこと、繰り返し取り外しが可能な部分に使用することもあります。

 

ボルトの溶接方法

ウェルドボルトの溶接は主に隅肉溶接が用いられ、スタッドボルトの溶接は基本的にスタッド溶接または抵抗溶接が用いられます。

 

隅肉溶接

隅肉溶接は鋼材をアーク溶接する工法の1つで、鋼板を重ねて繋いだり、T字に直交する接合面(隅肉)に溶着金属を持って溶接したりする工法です。

母材どうしが一体化していないため、多くの場合母材をまたぐ場所に三角形の断面がある溶着金属を用いて接合されます。

隅肉溶接は高エネルギーを使用するため、強烈な光や熱、ヒューム、ガスなどが発生します。
溶接の際は災害防止のために保護具など適切な安全対策が必要です。

 

スタッド溶接

スタッド溶接は、母材とスタッド材の間に電流を流して起こるアーク放電により、母材とスタッドを溶融し接合する工法です。

ボルトを溶接機の電極部分に挟み、電流を流して平板の間に火花を発生させ、ボルトやピンと平板が適度に溶けた状態で圧力を加えて溶融して溶接します。

スタッド溶接には「ショートサイクル方式」「電力アーク方式」「CD(コンデンサ)方式」の主に3種類があります。

・ショートサイクル方式

ショートサイクル方式は外板に亜鉛メッキを施した材料を使い、亜鉛メッキを溶融して溶接する工法です。
電力アーク方式と同じく直接電流を流して融解しますが、電力アーク方式よりも短時間でスタッド溶接が可能となります。

短時間で溶接が可能なことと操作性の簡便さが活かされたショートサイクル方式は、工場でのライン製造に適しています。
ショートサイクル方式は主に自動車産業で採用され、車体パネルなどの溶接に用いられています。

・電力アーク方式

電力アーク方式は、直接電源を使用してスタッドを融解・溶接する工法です。
溶接時間は100~1000msと短時間でありながらショートサイクル方式よりも強度な溶接が可能です。

厚みのある金属板などの母材に太いナットやボルトを溶接できるため、土木・建築の分野で活用されています。
鉄筋コンクリート造のアンカーベース、杭頭接合、耐震補強梁などの接合部分の溶接に用いられています。

・CD方式

CD(コンデンサ)方式は、交流電源から充電したコンデンサを用いて融解・溶接を行う工法です。

溶接時間が1~3msと短く、母材が薄い金属板でも変形や裏焼けなどが発生しにくい点が長所です。
非鉄材料にも対応でき、精密部品の板金加工に活用されています。

材料に影響が少ないため、自動改札機や自動販売機などの精密機器、制御盤製造や板金化粧の溶接などに広く利用されています。

ロボットで1枚の金属板に複数のスタッドボルトを連続溶接することが可能ですが、量産する場合には作業性の向上が困難なため、抵抗溶接への切り替えも考慮する必要があります。

 

抵抗溶接

抵抗溶接は、金属を重ね合わせて溶接する箇所を電極で挟み、適当な圧力を加えて電流を流して溶接部位の接触抵抗に発生するジュール熱で金属同士を溶融接着する溶接方法です。

抵抗溶接はさまざまなボルトの形状に対応でき、溶接部のスパッタを軽減できます。

代表的な抵抗溶接にはスポット溶接、シーム溶接の2種類があります。

・スポット溶接

スポット溶接は抵抗溶接のなかでも特に有名な方法で、対象物を点で溶接することから「スポット」と呼ばれています。
溶接したい金属を電極で挟み込んで加熱し、電極間に電流を流したときに発熱する抵抗熱により母材を溶融します。

条件管理ができていれば火花が散ることもないため安全に溶接できるほか、非溶接材が熱により歪む可能性が低く品質を安定させられるというメリットもあります。

・シーム溶接

シーム溶接は非溶接材を円盤の電極で挟み込み、電極を回転させながら連続で通電して生じる電気抵抗の発熱を利用して溶接します。

連続的に接合できるため、強度が高く機密性を保つ製品を製造できるため、燃料タンクなどの製造に用いられる溶接法です。

溶接速度が速く作業効率が高い一方で、高電流が必要となり、電極の摩耗も早く、製造コストが高い点で注意が必要です。
また、加工後の製品は熱により歪みが生じやすい点がデメリットです。

 

溶接方法を工夫して作業効率をアップさせる

ウェルドボルトとスタッドボルトの違いや溶接方法について解説しました。

板金などの製造工程では溶接方法をいかに工夫するかが作業時間の短縮とコストダウンに大きく関わります。
製品に最適な溶接方法を採用することでコストダウンと同時に品質向上も実現できます。

溶接加工業者に要望を伝えて最適な溶接方法を採用することが製造のポイントとなります。