-鉄筋をつなげる鉄筋継手とは!?溶接継手の工法の主な種類-

住宅の基礎や鉄筋コンクリート造の建物では鉄筋が使われます。
鉄筋工事では鉄筋は構造物に合わせた長さではなく、規格サイズにカットされたものが現場に搬入されるため、鉄筋をつなげる鉄筋継手が不可欠となります。
鉄筋継手にはいくつか種類があり、そのなかの溶接継手にもいくつかの方法があります。
今回は、鉄筋継手の種類や溶接継手の種類について解説します。

鉄筋とは

鉄筋はコンクリート造の建物などに使う構造用材料の1つで、引張力に弱いコンクリートを補強するために使われている棒鋼のことです。
鉄筋の種類には表面に突起のついた異形棒鋼と、断面が円形の丸鋼があります。
現在ではコンクリートへの付着性が高い異形棒鋼が一般的に使用されています。

鉄筋継手

鉄筋継手とは鉄筋どうしを接合することを指します。
鉄筋は、建設物の長さに合わせて切断されているわけではなく、規格に応じてカットされています。
カットされた長さ以上の鉄筋が必要な場合は継手が必要となります。
継手の工法は1900年ころまではすべて重ね継手でしたが、新しい技術が開発され、現在では4種類の工法があります。
①重ね継手
鉄筋の種類やコンクリート強度などを考慮して長さを決め、鉄筋を重ねて1本のようにする継手です。
②ガス圧接継手
ガスバーナーで加熱しつつ加圧して鉄筋を一体化させる継手です。
③溶接継手
溶接を用いて鉄筋を一体化する継手です。
④機械式継手
加熱せずスリーブを装着させて一体化する継手です。

重ね継手

鉄筋を重ねて配筋し、お互いを定着させる継手で、ラップとも言います。
鉄筋の種類や使用場所、コンクリートの強度によって継手長さが決まります。
また、フックを付けることでコンクリートの付着力が増し、継手の長さは通常よりも短くなります。
鉄筋の組立て、重ね継手をする場合、重ね継手を一定の長さ確保することが大切ですが、継手が複数箇所に及ぶ場合、継手部分にかかる力を分散させるため、重ね継手の位置が同じ箇所にならないように一定の距離ずらす必要があります。

ガス圧接継手

ガス圧接継手は鉄筋端面どうしを突き合せ、その周囲を酸素アセチレン炎で加熱して鉄筋端部を溶融させない赤熱状態にし、同時に軸方向に圧縮力を加えて接合する方法です。
ガス圧接継手は装置が比較的簡単でコストが安いこと、鉄筋どうしを直接接合するため継手性能への信頼性が高く重ね継手に比べて鉄筋が混み合わないことなどのメリットがあります。

溶接継手

溶接継手は溶接で鉄筋を接合する方法です。
主なものとしてフレア溶接、突合せ抵抗溶接継手、アーク突合せ溶接があり、ほかにワイヤメッシュ筋に使用される重ね抵抗溶接継手や鉄骨梁に鉄筋を接合する際に採用されるアークスタッド溶接継手があります。

機械式継手

機械式継手は異形鉄筋の節と周囲の鋼管等の機械的な噛み合いを利用して接合します。
鉄筋端部で継手が可能なこと、施工時に鉄筋が縮まないこと、作業するための特別な資格が不要なこと、天候の影響を受けにくいことがメリットです。
機械式継手は主に鉄筋先組工法やプレキャスト工法などに使用されます。
鉄筋の機械式継手では、主に「カプラー」「スリーブ」と呼ばれる筒を使用し、筒の中に鉄筋を挿入して固定します。
固定方法には筒の中にねじが切ってあるねじ節鉄筋継手や、筒内にモルタルを注入するモルタル充填継手があります。

エンクローズ溶接

エンクローズ溶接とは

エンクローズ溶接とは、鉄筋の断面の突き合せ溶接のことです。
接合する2本の鉄筋間の開先間隔部にセラミック製の裏当て材を取り付け、炭酸ガス半自動アーク溶接を行うものです。
一般的に鉄筋を接合する際はガス圧接を用います。
ガス圧接の場合、鉄筋を圧着させるために鉄筋が引っ張られます。
そのため、鉄筋業者は圧接により鉄筋が引っ張られる分を考慮して適切な長さの鉄筋を使用する必要があります。
また、ガス圧接は継手の位置を500mmずらす必要があります。
しかし、エンクローズ溶接の場合鉄筋が引っ張られず、必要な強度を確保できるため、ずらす必要がありません。

エンクローズ溶接を採用するケース

エンクローズ溶接はガス圧接のように鉄筋が引っ張られないことが大きな特徴です。
そのため、工区間でコンクリート打設の工程がずれるときに採用されます。
コンクリート打設の工程がずれる場合は、ガス圧接では鉄筋が引っ張られ、コンクリートに亀裂が入ってしまう場合があるため、エンクローズ溶接が採用されます。

フレア溶接

フレア溶接とは

フレア溶接は隣り合う鉄筋を突き合せ溶接する方法です。
主に鋼管に杭頭補助筋を溶接するときに行い、柱フープ筋や鋼管杭ひげ筋、床スラブ筋などの接合に用いられる工法です。
鉄筋同士を重ねた部分をアーク溶接で接合します。
鉄筋同士を重ね合わせることで複雑な形の鉄筋を作り出せ、鉄筋自体の強度も向上します。
これにより耐震補強工事や高速道路の高架橋、橋梁、大型建築物等で行われます。
フレア溶接を行うには資格が必要です。
まず基本級の「下向きSA-2F」があり、作業姿勢により姿勢の種類が変わります。
抗頭補強工事等で行う下から上への溶接は「縦向きSA-2V」、柱バンド、フープ筋等の横向きの溶接では「横向きSA-2H」の専門級が必要です。

鉄筋の溶接が禁止の現場もある

鉄筋は現場によって溶接不可のケースもあります。
理由は溶接により鉄筋が一体化しますが、加熱したあと急速に冷えることで性質が変わってしまい、強度を保つことができないためです。
また、一見接着できているように見えても、溶接技術によっては接着不良が起こる場合もあり、さらに断面欠損による構造物の耐久性に問題が出てくるという場合があります。
ただ、鉄筋溶接は完全に禁止というわけではなく、溶接技能者資格保有者が一定の条件のなかで溶接する場合は可能です。

用途に合わせて工法を選択する

鉄筋継手の種類や、溶接継手の代表的な工法をご紹介しました。
鉄筋継手は、構造物や現場に合わせて工法を選ぶ必要があります。
また、継手位置にも十分注意が必要です。
強度に合わせて適切な工法を採用する必要があり、また、継手のによっては特別な資格が必要な場合もあります。
施工に携わるためには十分な知識と経験が求められます。