溶接で使用する溶接材の材質には何がある?溶接棒・溶接材の種類

溶接は船舶や自動車、橋梁の様な大きな構造物から
金型や機械部品の様な精密部品まで広く活用されています。

溶接の手法にも様々な手法が存在し、母材や溶接の方法に合った溶接材の材質を選ばなければなりません。
そこで、アーク溶接の溶接棒を始めとした溶接材の種類についてご紹介します。

溶接棒の選び方

溶接棒を選ぶ際には以下の2点に注意して選びます。

1.溶接する母材(金属)の材質や板厚(厚さ)と溶接棒の種類を合わせる
2.使用する溶接機の電流量と溶接する板厚に合わせて棒の太さを決める

溶接棒の金属の種類

軟鋼低電圧用溶接棒

薄い軟鋼の鉄板などの溶接に使用します。
家庭用の100V電源でも使用することができる為、DIYでも可能です。

一般軟鋼用溶接棒

こちらも軟鋼用で、鉄の薄板から厚板まで幅広い用途での溶接で使用することができます。
ビードの伸びも良く再度溶接を始めた時の作業がしやすいのが特徴です。

ステンレス用溶接棒

ステンレスを溶接する溶接棒です。
ステンレス同士、ステンレスとそれ以外の金属で、溶接する際は違う製品を使います。

鋳物用溶接棒

鋳鉄などの溶接や補修に使用します。
基本的には下向け溶接のみに使用します。

被覆アーク溶接法とは

被覆アーク溶接とは母材と同じ材質の芯線に被覆材を塗り固めた溶接棒を電極とし
この溶接棒と母材の間にアークを発生させて溶接する方法です。

被覆アーク溶接では被覆アーク溶接棒を電極として
その端から5,000~6,000℃の高温のアークを発生させます。

アーク溶接法の中最も早く実用化された溶接方法で
全て手作業で行い、戦時中から使われてきたオーソドックスな方法です。

溶接棒に被覆材を使う理由としては以下のようなものがあります。

・アークの集中性と安定性を高める為
・保護ガスを発生させ、大気中の酸素や窒素の侵入を防ぐ為
・スラグを形成し溶接金属を覆い、ビード外観をきれいにする為
・スラグの融点や粘性等を適切なものに調節し、さまざまな姿勢での溶接を容易にする
・溶接金属の酸化を防ぎ、溶接の質を上げる為
・溶接金属に適した合金を添加する為

被覆アーク溶接棒の種類

被覆アーク溶接棒は鋼材の種類等で使い分けます。
被覆材の種類により、大きく
「イルミナイト系」
「ライムチタニヤ系」
「高酸化チタン系」
「低水素系」の4つに分けられます。

イルミナイト系

イルミナイトはチタンと鉄の酸化物を結合した鉱物です。
被覆材にイルミナイトが約30%配合されている溶接棒を「イルミナイト系」と呼びます。

ライムチタニヤ系

被覆材に高酸化チタンを約30%、炭酸石灰(ライム)などの塩基性物質を約20%含んだ溶接棒です。
アークが穏やかでスラグの流動性がよく、広範囲で使用できる点が特徴です。

高酸化チタン系

被覆材に高酸化チタンを約35%配合している溶接棒のことです。
アークが安定しているのでスパッタが少なく
品質への悪影響や塗装欠陥などが起こりにくいという特徴があります。

低水素系

被覆材に炭酸カルシウムやフッ化カルシウムを多く配合している溶接棒です。
溶接金属の水素料を最小限に抑え、脱酸作用から酸素量も少なくすることができる為
溶接不良の発生を抑えることができます。

溶接の手法別溶接材料

これまで被覆アーク溶接棒の種類についてご紹介してきましたが
溶接の手法により溶接材料にはさまざまな種類があります。

ティグ溶接棒

ティグ溶接棒は所定成分を含有した針金状の溶接棒です。
銅メッキやフラックス入りタイプもあります。

ティグ溶接はスパッタやヒュームが発生しないことや、ビード外観や溶接金属の機械的性能が優れていることから
あらゆる金属に適用させることができ、パイプや補修溶接に多く用いられます。

シールドはAr等の不活性ガスを吹き付けて行います。

ガスシールドアーク用ソリッドワイヤ

ソリッドワイヤを使ったガスシールドアーク溶接は
半自動溶接でロボットと組み合わせられることがよくあり、日本で最も多く使われています。

所定成分を含有した針金状のワイヤで、銅メッキを施しているものと施していないものがあります。

ガスシールドアーク用フラックス入りワイヤ

フラックス入りワイヤは中心部のフラックスを薄い銅板で巻いたワイヤです。
銅メッキを施しているものと施していないものがあります。

ソリッドワイヤに比べ、低スパッタで全姿勢溶接性やすみ肉の外観に優れています。
造船、橋梁分野で多く用いられており、シールドガスが不要のタイプもあります。

サブマージアーク溶接用ワイヤ

所定成分を含有した太い針金状になっており、フラックスと組み合わせて使います。

サブマージアーク溶接は超高電流で溶接が可能であり、多電極化により非常に高能率となります。
アーク光が発生せず、外観にも優れ風の影響も受けないのが特徴です。

サブマージアーク溶接用フラックス

所定成分を含有・混合した粉状のフラックスです。

溶接部に散布して使い、アークを覆います。
製造方法により、溶融タイプや焼結タイプがあります。

帯状電極

所定の幅を有した帯状形態の溶接材料です。

母材鋼板の上に異種金属を肉盛り溶接する場合に用いられ、ビード幅が広い為高能率な施工が可能です。
溶接法にはサブマージアークやエレクトロスラグ溶接法があります。

溶接材料の開発動向

溶接材料は
「溶接の高能率化」
「溶接部の高性能化」
「溶接の環境改善」をキーワードとして日々進化しています。

アーク溶接の半自動化、自動化、ロボット化は各産業界で進んでおり、高能率化の強力な武器となっています。
半自動化、自動化、ロボット化をより効率的に進めていく上で
ソリッドワイヤ等の能率性に関する改良・開発が行われています。

例えば「高性能・銅メッキなしソリッドワイヤ」や「大入熱・高パス間温度対応ソリッドワイヤ」
「薄板用ステンレス鋼FCW」などです。

さらに、低合金鋼、高合金鋼などが適用される構造物では
溶接材料の高性能化・高級化の要求がますます高まっており、性能面での技術課題も多くなっています。
高合金鋼の溶材としては
「二相ステンレス鋼用溶材」「高温用ステンレス鋼用FCW」「ニッケル基合金用FCW」など
シュシュの開発が進められています。

適した材質の溶接材料を使いましょう

溶接は大きな構造物から小さな部品までさまざまな物を製造するのに活用されています。

その為、溶接の手法は多岐に渡り、それに伴って溶接材の種類も多数あります。
溶接材は母材、溶接方法や目的に合ったものを選び使用することが大切ですので
目的に最も適した溶接材を使用するようにしましょう。