ガス溶接の注意点とは?作業手順と起こりうる労働災害

ガス溶接は高圧ガスを使用するため器具や装置からガスが漏洩し、溶接作業中に爆発や火災などといった労働災害が発生するリスクがあります。
一旦労働災害が発生すると被害が大きくなることが多いため、作業は注意点を守って行う必要があります。

この記事では、ガス溶接の作業上の注意点や必要な資格などについて解説します。

 

ガス溶接とは

ガス溶接は可燃性ガスと酸素が結びついて燃焼するときに発生する熱を利用し、金属などの溶接を行う方法です。

ガス溶接ではアセチレン、水素、LPガス、メタン、石炭ガス、都市ガスなどを使用します。
特に一般的に実用されているのはアセチレンガスで、酸素ガスと混合させて溶接する酸素アセチレン溶接として知られています。

吹管のアセチレン弁を開いて点火すると、すすを伴った赤い炎が火口の先端で燃え続けます。
これを拡散炎と呼び、火炎の温度は最高1,000度程度あります。

そして、吹管の酸素弁を少しずつ開けると白色から青白い炎に変化し、最高3,300度に達する高温の火炎に変化します。
この状態の火炎は吹管内でアセチレンと酸素の混合ガスとなっているので予混合炎と呼びます。

溶接作業は、可燃性ガスと酸素で発生させた熱を材料の接合部に当てて溶融させたあと、冷却させて材料同士を結合させます。

 

ガス溶接のメリットと注意点

 

ガス溶接のメリット

ガス溶接はアーク溶接に比べて火花が発生しないため作業箇所が見やすく、溶接ミスの防止が可能です。

電気を使用しないため、電気のない現場でも溶接が可能です。
ガスの供給量の調節もしやすく、加熱し過ぎによる材料の割れを防止したり、薄肉の板材や溶融点の低い金属の溶接に適しています。

 

ガス溶接の注意点

ガス溶接の注意点は加熱に時間がかかる点と溶接温度が低い点です。

作業時間が長くなる傾向があるため、厚みのある板材の溶接やなめ付け溶接には向いていません。
また、熱を1点に集中して与えられないため、不要な箇所まで加熱されてしまい、ひずみが発生しやすい点も注意点の1つです。

 

ガス溶接の手順

ガス溶接は可燃性ガスの取り扱いや手順を誤ると労働災害につながる可能性があるため、作業手順を十分に理解したうえで作業を行います。

 

作業前の確認

ガス溶接で用意するものは可燃性ガスボンベと酸素ボンベ、圧力調整器、専用ライター、ホース・ガス溶接トーチです。

各装置は作業前に点検を行います。
圧力調整器でガスの残量を確認したあと、ガス圧調整バルブを設定しガス漏れがないことを確認します。
トーチへの点火前にバルブを少し開き、ガスが噴出していることを確認します。

 

溶接作業の準備

溶接用保護具を装着したうえで、溶接トーチのバルブを少し開き、専用ライターで点火します。

酸素ボンベのバルブを開いて、標準炎に調節します。
適した火炎になるように試し加熱を行います。

 

ガス溶接作業

溶接したい材料をセットし、接合部の両端を溶融して固定して溶接します。

 

消火

酸素ボンベのバルブを閉めてからガスボンベのバルブを閉めます。
先にガスボンベのバルブを閉めると爆発の可能性がありますので順番を守って消火します。

 

ガス溶接の注意点

 

火災・爆発

ガス溶接はアセチレンガスのような危険なガスを使用します。
火災や爆発の危険性が高く、注意点を守って作業し安全を確保します。

そのため、ガスボンベを運搬するときには十分注意し、ガスの特性を十分に理解して取り扱う必要があります。

ガス溶接で火災・爆発を起こさないためにはアセチレンガスの漏洩を起こさないことが重要です。

圧力計の壊れた調整器や期限切れの逆火防止器、硬くなったりひび割れたゴムホース、流量調整が効かない吹管ニードルバブルなどは使わず、新しい物に交換して使用します。

万が一、アセチレンガスに着火して、炎が出ている場合には、まずボンベなどの元栓を締め、消火に努め、大量の水で容器を冷却します。
器具やツインホースの切れ目からの火炎であれば元栓を締めれば鎮火します。

しかし、いったん鎮火しても余熱で再度着火する可能性もありますので、鎮火後も十分な冷却を行います。

 

逆火

ガス溶接では可燃性ガスと酸素を混合させると逆火の危険がつきまといます。

逆火は火口から吹管内部に火炎が引き込まれる現象です。
火炎が形成されている火口付近の燃焼口から噴出する混合ガスの流速と燃焼速度のバランスが崩れたときに発生します。

逆火の注意点としては

①「パチン」と鳴って火が消えたらバルブをすぐ締める
②「シュー」という吸い込み音が聞こえたら注意する
③バルブをすべて締めてから酸素と混合ガスを仮に噴射して、切断機の中に残り火がないか確認する

逆火したバーナーは点検に出します。
また、激しく逆火したガスバーナーは内部に熱が加わっており、思わぬところから火が出る可能性が高いため使わないようにします。

 

ガス溶接に必要な資格

ガス溶接を行うすべての人は「ガス溶接技術者」の資格を持っている必要があります。
また、ガス溶接作業者を指揮・監督するためには「ガス溶接作業主任者」の資格が必要です。

 

ガス溶接技能者

・資格の概要

労働安全衛生規則では、可燃性ガスと酸素を用いて行う金属の溶接・溶断・加熱の作業に従事する者は、原則としてガス溶接技能講習の修了者でなければならないことになっています。

ガス溶接技能講習は2日間、学科と実技を受講します。

・講習内容

学科
1.設備の構造・取り扱いの知識…4時間
2.可燃性ガス及び酸素の知識…3時間
3.関係法令…1時間
4.学科試験…1時間

実技
ガス溶接等の設備の取り扱い…5時間

 

ガス溶接作業主任者

・資格の概要

ガス溶接作業主任者はアセチレン溶接、ガス集合溶接装置を用いて金属の溶接・切断・加熱の作業を行う際に、作業方法を決定・指揮をする責任者です。

作業主任者は事業者により選任され、作業全般の責任者として作業方法の決定、作業者の指揮などの職務に携わります。

・試験科目

1.ガス溶接等の業務に関する知識…5問(25点)
2.関係法令…5問(25点)
3.アセチレン溶接装置及びガス集合溶接装置に関する知識…5問(25点)
4.アセチレンその他可燃性ガス、カーバイド及び酸素に関する知識…5問(25点)

 

ガス溶接は安全のため正しく行う

ガス溶接は扱い方により大きな事故が起こる可能性があるため、作業手順や注意点を十分理解し、正しく行う必要があります。

同時に実際に起きた労働災害と原因、対処方法などの情報収集も行い、労働災害の防止に努めることも大切です。