溶接材料にはどのようなものがある?被覆溶接棒の種類と特徴を解説

溶接材料はその名の通り溶接を行う際に必要な材料で、溶接棒を代表としてさまざまな種類が存在します。
溶接を行う際には、母材や溶接の目的に合わせて適切な溶接材料を選ばないと破壊現象にも繋がるため注意が必要です。

この記事では溶接材料の種類、被覆タイプの溶接棒の種類と特徴について解説します。

溶接材料とは

溶接は金属同士を熱や圧力で溶融し、連続的に一体化させる金属手段のことを言います。
この溶接のときに加える添加材料が「溶接材料」です。
溶接材料は母材と凝固する際に一体となって「溶接金属」となります。

溶接金属は母材の金属と不連続点になるため、何らかの力が働くと破壊現象の起点となりやすくなります。
したがって、溶接材料は母材に近い材質や目的に合わせて適切なものを選ぶ必要があります。

溶接材料の種類

溶接材料にはJISで決められているもので64種類あります。
主に使われる溶材は以下となります。

被覆アーク溶接棒

被覆アーク溶接棒は母材と同じ材質の金属の棒にフラックスが塗装されている溶剤です。
耐風性に優れ、溶接時にフラックスからガスが発生するため、シールドガスが不要で溶接が可能です。

被覆アーク溶接では被覆アーク溶接棒を電極として5,000~6,000度のアークを発生させます。
すべて手作業で行うオーソドックスな手法です。

被覆アーク溶接棒を使うメリットには以下のようなものがあります。

・アークの集中性と安定性が高まる
・保護ガスを発生させ、大気中の酸素や窒素の侵入を防ぐ
・スラグを形成し溶接金属を覆い、ビードを綺麗にする
・スラグの融点、粘性を適切に調節し、さまざまな姿勢での溶接を可能にする
・溶接金属の酸化を防ぐ
・溶接金属に適した合金を添加する

ティグワイヤ

ティグワイヤはビードや溶接金属の機械的性質が優れるため、補修溶接やパイプなどに多く用いられます。

ガスシールドアーク用ソリッドワイヤ

溶接ワイヤには「ソリッドワイヤ」と「フラックス入りワイヤ」がありますが、ソリッドワイヤは断面に何もない単なる金属構造になっています。

ソリッドワイヤはさらに大電流用と小電流用に分かれ、炭酸ガスを使用する大電流用のガスシールドアーク溶接用ソリッドワイヤは厚物の溶接に適しています。

ガスシールドアーク用ソリッドワイヤは造船、建築、公共工事などに多く使われ、日本国内で広く使用されている半自動溶接用の溶材です。

ガスシールドアーク用フラックス入りワイヤ

中心部のフラックスを薄い銅板で巻いた溶材で、造船や橋などに使用されます。

フラックス入りワイヤは、ソリッドワイヤに対してワイヤ内にフラックスと呼ばれる粉が入っています。

フラックスワイヤはスラグ系とメタル系に分かれ、メタル系は「スラグが少ないタイプ」と「スラグが多いタイプ」で分類されることも多くあります。

サブマージアーク溶接用ワイヤ

太い針金状の溶材で、製品によりさまざまな成分を含有しています。
主にフラックスと組み合わせて使用します。

被覆タイプの溶接棒の種類

被覆アーク溶接棒にはいくつかの区分が存在します。

イルミナイト系

チタンと鉄の酸化物が結合した「イルミナイト」という鉱物を含んだ溶接棒です。

アークが強く、安定性、集中性に優れているため、安定した溶け込みを得ることができます。
技能試験やコンクールでもおなじみの溶接棒です。

【イルミナイト系の特徴】
・イルミナイトを主原料としている
・全姿勢溶接が可能
・スラグの流動性が良く、溶け込み、機械的性質も良好
・放射線透過試験の成績も良好
・水素が多いため厚板や拘束の大きい構造物には向いていない

ライムチタニヤ系

フラックスに抗酸化チタンと炭酸石灰(ライム)を含有した溶接棒です。
難吸湿タイプのため、吸湿しやすい環境下でも再アーク性に優れ、スラグの焼き付きも少なく美しいビードを形成させることができます。

【ライムチタニヤ系の特徴】
・高酸化チタン(30%)と石灰石(ライム)、ドロマイト等で構成される
・全姿勢溶接が可能
・アークが穏やかで流動性が良く、多孔質のため立向上進溶接が容易となる
・耐ブローホール性がやや劣るため、放射線透過試験が要求される場合は注意が必要

高酸化チタン系

チタンの酸化物である酸化チタンを多く含んだ溶接棒です。
スパッタが少なく、スラグ被りと剥離が良好です。
美しい光沢のあるビードが得られるため、外観を重視する溶接に用いられます。

【高酸化チタン系の特徴】
・酸化チタンを主成分としている
・全姿勢溶接用の溶接棒
・アークが穏やかで、スパッタが少なく剥離やビード外観が美しい作業性が良好な溶接棒
・溶け込みが浅く薄板向け立向下進溶接が可能
・機械的性質がやや劣るため、主要部分の溶接にはあまり使用されない

低水素系

低水素系の溶接棒はフラックスに有機物を含まず、高温乾燥により、ブローホールの原因となる金属中の水素量を少なくすることができます。

【低水素系の特徴】
・炭酸カルシウム、フッ化カルシウムが主成分
・有機物、結晶水を持つ鉱物は含まない
・水素量が多く強力な脱酸作用で酸素量が少ないので靭性が良い
・割れ感受性が低く、機械的性質が良好
・スタート時のアークが不安定なため、ビード始点やビード継部にブローホールが発生しやすくなる
・被覆材は湿気の影響を防ぐために乾燥条件、時間の管理が必要

母材と目的に適した溶接材料を選ぶ

溶接材料の種類や特徴について解説しました。

母材に合わせた溶接材料を使用しないと製品の質の低下につながりますので、適切な溶接材料を選ぶことが大切です。

溶材の選び方や溶接方法が難しいと感じた場合は溶接会社に相談すると安心です。

重要な部分の溶接を行う場合や製品の質を高めたい場合、適切な材料と機材を揃えると負担になる場合は一度溶接専門業者に問い合わせてみることをおすすめします。