-溶接のアークとは?アーク溶接の種類や特徴をチェック!-

アーク放電と呼ばれる現象を利用して金属の母材同士を接合する手法を、アーク溶接と呼びます。

アーク溶接に用いられるアークとは、電極の間に電流が流れるプラズマ現象の一種で、かなりの高温になるのが特徴的です。

この記事では、アークとはどのようなものなのか、その仕組みやアーク溶接の手法について詳しく解説します。

 

溶接のアークとはどんな現象のこと?

アーク溶接に使用するアークとは気体放電現象の1つで、形成された放電はアークプラズマとも呼ばれます。

2つの電極間に電圧を加えると、その間にある気体が絶縁破壊と呼ばれる現象を起こし、アークの電流が発生します。

空気中に発生する電流が弧(Arc)の形を描くことから、この放電をアークと呼ぶようになりました。

 

放電にはさまざまな種類がありますが、アーク放電は低い電圧であっても大きな電流が流れます。また、強い光や音、熱が発生しやすいのもアーク放電の特徴です。

アーク放電が起きているときには、放電の中に電子や中性粒子、イオンといった物質が発生します。

質量の小さな電子が電界からのエネルギーを受けると、運動エネルギーが高まって中性粒子やイオンとの衝突が起こります。

この働きによって、電気のエネルギーが光や熱のエネルギーに変化し、放電を起こすのです。

 

気体放電現象というと馴染みが薄いように思われるかもしれませんが、コンセントからプラグを引き抜いたときに起こるスパークはアークの一種です。

また、電車の上部にあるパンタグラフにはたびたび発光が起きますが、これもアーク放電の一種といえます。

こういったアーク放電の現象は不安定なため、放電を安定的に維持するのは難しいものです。

しかし、専用のアーク溶接機を使えばアーク放電を安定化させることが可能となります。

 

アークとは金属同士の溶接に活用できる現象のこと

金属同士の母材を溶接する方法はいくつも考えられますが、最もよく利用されるのがアーク溶接です。

アーク溶接はさまざまな金属に対して使用することができ、さらに自動化もしやすいなど多くのメリットがあります。

そのため、アーク溶接は自動車製造や電化製品製造、建設など数多くの分野で活用されています。

 

アーク放電の現象によって生じる熱はかなりの高音に達するため、多くの現場ではアークを活用した金属同士の溶接が行われています。

アーク溶接の際には電極側にプラスの電圧を、母材側にマイナスの電圧をかけます。

すると、電極から母材に向かってベル型のアークが発生します。

このとき発生したアークは外周部でも5,000~10,000℃、中心部では15,000℃以上にも及びます。

そして、高温のアークプラズマの中で上から下に向かって高速のガス気流が流れます。

このガス気流はプラズマ気流と呼ばれ、発生する気流の秒速はなんと100m以上にも達します。

金属を溶接するためには、金属の融解温度以上の熱を加える必要がありますが、アーク溶接の技法を使えば手軽に金属を溶かして接合することが可能です。

 

アーク溶接にはさまざまな種類がある

ここからは、アーク溶接の種類ごとに、その手法や特徴を紹介していきます。

 

被覆アーク溶接

アーク溶接の中でも主流となっている方法の1つが被覆アーク溶接です。

被覆アーク溶接では、電極となる金属の芯線にフラックスと呼ばれる被覆材をかぶせたものを用意し、被覆を溶融する方法で接合を行います。

フラックスをアーク溶接で熱分解させれば溶接部にシールドガスが発生するため、別途シールドガスを使う必要がなくなります。

 

ミグ溶接、マグ溶接

溶接のうち、シールドガスとしてアルゴンやヘリウムといった不活性ガスを使うものをミグ溶接、炭酸ガスと不活性ガスを混合したガスを使うものをマグ溶接と呼びます。

自動供給できる溶接ワイヤーを電極材として通して加工するため、半自動での溶接作業が可能となります。

シールドガスを使ったミグ溶接やマグ溶接は、ステンレスをはじめとしたさまざまな金属の接合に活用できます。

 

サブマージアーク溶接

サブマージアーク溶接とは、フレックスをワイヤーに散布する接合方法です。

まずワイヤーを被覆してから溶接を行うため、不活性ガスを使う必要はありません。

被覆材の中にアーク放電が発生するサブマージアーク溶接では、まぶしい光から遮光を行う必要がなく、作業が手軽です。

ただし、接合作業のあとにはスラグの剥離などの対処が求められます。

 

ティグ溶接

ティグ溶接とはアルゴンやヘリウムといった不活性ガスを使ってアークを発生させ、この熱で溶接をする手法です。

電極にタングステン棒を使用し、さらに溶接棒を溶加材として用いるのが一般的です。

ティグ溶接の手法を使えば、ステンレスやアルミなどさまざまな金属を強固に接合させられます。

また、ティグ溶接ではアーク放電が安定しやすいため、スパッタと呼ばれる金属粒子が発生することも殆どありません。

 

プラズマ溶接

プラズマアークを使った溶接の手法をプラズマ溶接と呼びます。

プラズマアークは広がりにくいという特徴を持つため、接合部に集中的に熱を送りたいときに適しています。

プラズマ溶接を選択すれば、丈夫でありながら歪みも少ない高品質な接合が可能となります。

 

アークを活用した溶接の品質を保つためのポイント

適切な方法でアーク溶接を行えば部材同士は強固に溶接されます。

しかし、アーク溶接をする際には大きな光が発生するため溶接箇所が見づらくなり、初心者は溶接不良などの失敗を起こすことがあります。

また、溶接の際に金属が空気に触れていると、酸化や窒化による溶接不良が起きるケースもあるため、注意が必要です。

溶接の失敗を防ぐためには、シールドガスと呼ばれるガスを使うのが効果的です。

シールドガスとして使用されるガスには、アルゴンやヘリウムといった不活性ガス、比較的安価な炭酸ガスなど多くの種類があります。

シールドガスを活用すれば接合部が空気に触れにくくなり、酸化や窒化などのトラブルが起こりにくくなります。

 

アークとは強い熱を発する気体放電現象のこと!

製造業をはじめとした各分野で活用されているアークとは、放電現象によって起きる熱によって金属を溶接する手法です。

アークによって発生した高い熱によって金属を溶かせば母材を手軽にくっつけることができます。

アーク溶接の作業を実施するときには、アークとはどのようなものなのかを十分に理解しておきましょう。