溶接加工とは?溶接の種類とメリット・デメリットを解説

金属同士を接合させる「溶接」は、自動車や船舶、建築資材等や電子機器等あらゆる製品を制作する工法として用いられています。
しかし、溶接と言っても加工方法は60種類以上にも及び、その特徴も異なります。

そこで、溶接加工の概要や溶接の種類やメリット・デメリットについてご紹介します。

溶接加工とは

溶接加工とは2つ以上の金属を熱等により接合する加工方法です。

ネジやボルトで取り付けるのとは異なり、隙間が接合部に出来ることなく気密性・水密性を保つ事ができ、液体流すパイプなどにも使用されます。

さらに、ネジやボルトを使用しない事で重量の増加を軽減する事が可能です。

溶接には材料に応じて多くの加工法が存在し、その種類は全部で60種類以上にも及びます。

溶接には大きく分けて「融接」「圧接」「ろう接」の3つの種類があります。

融接(溶融溶接)

融接とは

溶接の中で最も一般的な加工法が「融接」です。
材料の溶接部を加熱して材料どうしを融合させて溶融金属をつくり、冷却によって凝固させて接合するという方法で加工します。

融接には溶接する材料どうしのみで接合するほか、溶加材を加える場合もあります。

融接のメリット

・サイズ、形状問わず加工ができる
・加工法が多く、材料に合わせて加工が可能
・精密加工ができる溶接法が多い
・自動化が可能な加工法があり、コスト削減が可能
・一定の強度を確保できる

融接のデメリット

・ブローホールやクラック等の欠陥が起こる事がある
・技術者のスキルによって品質や仕上がりに差が生まれやすい
・圧接ほどの強度は期待できない

融接の主な加工法

・アーク溶接
・ガス溶接
・レーザー溶接
・電子ビーム溶接

圧接(加圧溶接)

圧接とは

圧接は機械で圧力を材料の接合部に掛けて溶接する方法で、自動溶接やロボット溶接で導入されています。
通常、母材を溶かして液相にせず固相のまま接合する為、「固相接合」と呼ばれる事もあります。

圧力だけで溶接する手法だけでなく、摩擦熱により溶接する材料を発熱させてから圧着する手法やガスの炎により加熱圧着する手法があります。

圧接のメリット

・導入が比較的容易
・多くの加工法で材質やサイズを選ばない
・異種材料間での加工に向いている
・固相のまま接合するので材料が傷みにくい
・溶接材不要
・ガス、スパッタが発生しない

圧接のデメリット

・形状が限定される工法がある
・複雑な形状には不向き
・加工断面の確認が出来ない為施工管理が困難

圧接の主な加工法

・摩擦圧接
・ガス圧接
・抵抗圧接
・拡散圧接
・超音波圧接
・爆発圧接

ろう接

ろう接とは

ろう接は溶接する材料を溶かす事なく、溶加材を接合面の隙間に行き渡らせて接合する加工法です。
基盤の製造等で用いられるはんだ付けが代表的な加工法です。

ろう接のメリット

・母材がほとんど溶けない為、寸法精度が高い
・真空歪みが少なく薄板や精密な接合ができる
・接合箇所が複数ある複雑な形状の接合の自動化に適している
・融接に比べて異種材料間や特殊材料での接合が容易
・ろう材を母材の融点が異なる為、再加熱により接合部を剥がす事ができる

ろう接のデメリット

・接合強度が他の溶接方法に比べて弱い傾向がある
・ろう材と母材の組み合わせによっては侵食が起こる
・接合部を直接確認出来ない為、欠陥の発見が困難

ろう接の主な加工法

・ろう付け
・はんだ付け

代表的な溶接加工法とメリット・デメリット

被覆アーク溶接

「手溶接」とも言われる手法で、母材と同材質の金属棒を電極とし、この心線と母材の間に形成されるアークを熱源とする溶接法で、消耗電極式アーク溶接法の一種となります。

メリットは
・外の環境に影響されにくく屋外での作業も可能
・設備価格が安価
・保守点検が容易
・素材・構造等に左右される事なく溶接が可能
という点です。

デメリットとしては
・溶接速度が遅い
・スラグ処理を必要とする
・ヒュームが多量に発生する
・施工者のスキルにより仕上がりに違いがある
等があります。

CO2アーク溶接

ガスシールドアーク溶接の1つで、シールドガスにCO2(炭酸ガス)を使用する溶接手法です。

メリットは
・安価な炭酸ガスを使用する為ランニングコストが安い
・薄板鋼板の施工に向いている
・アークの状態を見ながら溶接ができる
等です。

デメリットは
・厚板鋼板の溶接には向かない
・一酸化炭素が発生する為換気が必要
・スパッタが発生しやすく接合面の外見が悪くなりやすい
・シールドガスが風の影響を受けやすく、ブローホール等の溶接欠陥が発生しやすい
です。

MIG溶接

ガスシールドアーク溶接の1つで、シールドガスにアルゴンガスを使用する溶接手法です。

メリットは
・ステンレス素材、アルミニウム素材等の非鉄金属でも使用できる
・溶接が高速で仕上がりが美しい
という点です。

デメリットは
・アルゴンガスが高価である
・アークが広がりやすく、溶け込みが浅くなる事による溶け込み不良が発生しやすい
・風の影響を受けやすい
という点です。

TIG溶接

アーク溶接の一種で、電極にタングステンを用い、シールドガスに不活性ガスを用いた手法です。

メリットは
・薄板鋼板や複雑な形状等にも溶接できる
・仕上がりが美しい
・スパッタがあまり出ない
・長時間の連続溶接が可能

デメリットは
・溶接速度が遅い
・不活性ガスが高価でさらに溶接速度が遅い為コストが高い
・風の影響を受けやすい
等です。

レーザー溶接

レーザー光を集光して金属に照射し、金属を溶融する事で接合する溶接手法です。

メリットは
・高速溶接が可能
・磁力や電気の影響を受けない
・微細加工ができる
・異材接合が可能
・電極管理が不要
な点です。

デメリットは
・溶接箇所の高い部品精度が必要
・剛性の高い溶接治具が必要
・部品の隙間が多いとブローホールやクラックが発生しやすい
・レーザー光の反射対策等安全対策が重要
・設備導入費用が高い
等があります。

スポット溶接

溶接材を重ね合わせ、電源に接続された通電用銅電極で溶接部を挟んで通電し、ジュール熱で接合する方法です。
ファクトリーオートメーションでは抵抗スポット溶接が製造ラインの工程で広く用いられています。

メリットは
・溶接速度が速い
・自動化しやすい
・部品の消耗が少ない
・作業員の技術レベルに依存しない
・異材の溶接に向いている

デメリットには
・機材が高額
・高電流が発生する為、他の電気設備に影響が出る可能性がある
・非破壊検査で適切なものがない
等です。

溶接にはさまざまな加工方法がある

溶接加工の概要や主要な溶接方法、メリット・デメリットについてご紹介しました。

溶接にはさまざまな加工方法が存在しますので、施工に携わる人は溶接についての理解を深め、適切な加工方法で溶接を行う事が大切です。